tomosaanのブログ

世の中の気になったこと、覚えておきたいと思った知識でクイズにできない情報量のものをメモの形で残しています。大抵、Wikipediaや検索上位の情報をそのまままとめたものなのでものということにご注意ください。

モラル・ハザード

モラル・ハザードという言葉をご存知ですか。 英語のわかる方なら、モラルの欠如、倫理の崩壊などが思い浮かぶと思います。
実際、日本ではモラル・ハザードがこの使い方をされることもあります。しかし、この意味は日本独自のものであり、誤用とされることが多いです。

今回は、このモラル・ハザードについて書いていこうと思います。

じゃあ本当のモラル・ハザードって何?

結論から言うと、情報が公平でないために効率的な資源配分が妨げられる現象のことを言います。

これは、プリンシパル=エージェント理論と言われます。「使用者と被用者の関係」や「医者と患者」などの関係性において、情報の非対称性によりエージェント(代理人)の行動についてプリンシパル(当人)が知り得ない情報や専門知識がある(片方の側のみ情報と専門知識を有する)ことから発生します。

また、危険を回避するために整備した手段や仕組みによって、かえって人々の注意が散漫になって危険や事故の発生率が高まって規律や秩序が失われる状態のことを言います。

これだけでは、どのようなものか掴めないと思うので次項で例を挙げたいと思います。

具体的にはどんなものがあるか?

会社で考えられるシーンとしては、外回りの営業マン(エージェント)が、上司(プリンシパル)の目を盗んで、勤務時間中に仕事を怠ることがあります。
この場合は、上司は外回りの状況を掴むことが困難なために情報の非対称性が生じ、モラル・ハザードが発生したと言えます。

病院ではどうでしょう?
病院においては、医師が不必要に多くの薬を患者に与え、利益を増やそうとする場合です。
この場合、患者は自分の病気について医者ほどの知識をもっていると言うことは極めてあり得ない状況なので、医者がもっている専門知識を患者は持ち合わせていないためにモラル・ハザードが起きたといえます。

保険におけるモラル・ハザード

モラル・ハザードについて説明しましたが、実は、モラル・ハザードは本来、保険会社で使われていた用語です。“本当のモラル・ハザードって何?"で説明した危険を回避するための仕組みが危険を生み出すという意味で用いられ、広義ではプリンシパル=エージェント問題に含まれます。

自動車保険において、「保険によって事故が補償される」という考えを持つようになると、被保険者のリスク回避や注意義務を阻害するという現象を指します。医療保険においては、健康保険に入っていることで加入者が健康維持を怠るという現象が起きることがあります。

また、民間の保険のみでは成り立たない理由の一つとして、クリームスキミング(いいとこ取り)と合わせて、保険者と被保険者の情報の非対称性を利用してリスクの高い人を保険に加入させないことで利益率を上げようとするモラル・ハザードが発生する可能性が挙げられます。

最近知っておきたいモラル・ハザード

昨今のコロナ渦において、政府の政策がモラル・ハザードを引き起こす可能性があることが明らかになりました。

コロナ危機が起きる前までは、主に大企業を中心に内部留保金(簡単にいうと投資などに使われずに積み立てられた利益のようなもの)を溜め込んできた企業は悪とされていました。ー経済学的に、利益は投資に回すべきだという考えがあります。しかし、視点を変えるとこのような企業はリスクを取らずに健全な経営をしてきたとも取れるのです。
実際、このような企業はしばらくは支援も求めないことが多いですし、支援されないでしょう。今回のような有事のときには、健全経営をしてきた企業は倒産の可能性が低いので、支援の対象から外されることが多いのです。

すると、どのような企業が支援されるのでしょう?
不健全な状態で経営されている企業ほど、利益が少なく資本金も小さいので、倒産する可能性が高くなります。そこで、「うちが倒産すると失業者が増えるぞ」と訴え、労働者をある意味で人質にして、政府に支援を求めます。

結果として、慢性的に赤字を垂れ流し続けてきた企業や、薄利多売で不健全な経営を続けてきた企業を「弱者を助ける」と言って支援することになります。
これが、「不健全な経営をすればするほど得になる」というメッセージになってしまいます。逆に、「健全な経営をする企業は、平時には税金を払い、有事には支援の対象にならない」という、極めておかしいメッセージです。

この場合のモラル・ハザードは、コロナ危機によって企業が倒産することを避けるために支援したことがかえって、「不健全な経営をしている方が支援される」という考えを醸成することにつながり、不健全な経営が増えて倒産が増えるという結果を導き出すというものです。

どの先進国でも多かれ少なかれ、「中小企業支援」が"小"によってしまう傾向があるようです。日本の場合、支援の対象は従業員数3〜4人の企業が主な支援対象です。そのため、有事のときには中堅企業や大企業が負担を課されることが多いようです。
しかし、日本の雇用の40%以上を中堅企業が占めていることを考えると、本来なら守るべきはそちらなのかもしれません。

感想

モラル・ハザード。知っておくと、この場面はモラル・ハザードが起きる可能性があるのではないか?と気づくことができるかもしれません。
上記の企業支援の例のように、「ただ支援すればいい」というわけではないのです。

今回のように「企業の支援」のような実生活に深く関わるセンシティブな要件について述べると、気分を害された方がいるかもしれません。この文章は、経済やこの用語に造詣のない一端の20代前半男性がちょろっと調べてまとめただけ、ということにご注意ください。
"情報の非対称性"でいじめないでくださいね!(笑)